寺島塾長から

「新渡戸稲造記念 遠友みらい塾」塾長 挨拶

今年(2015年)4月、奈良・東大寺の三月堂で秋山孝二さんとお会いしました。/秋山さんは、寺島文庫戦略経営塾の設立以来の仲間であり、私の故郷でもある札幌で長く社会貢献事業に取り組んでいる敬服すべき友人です。/その際、新渡戸稲造夫妻が設立した「遠友夜学校」に関わる活動にも代表者として奮闘されている話を聞き、北海道出身者として協力できることがあればという話が動き始めました。/私の個人史で言えば、高校卒業までの多感な8年間を札幌で過ごしており、何か故郷に役立てることがあれば…という気持ちを持っておりましたし、微力ながら故郷のことについて積極的に参画してきました。/今回は「新渡戸稲造」をキーワードにした「遠友みらい塾」の設立をお聞きし、その塾長を引き受けることにいたしました。/この活動では、過去の先達の足跡に学ぶだけでなく、時代が要請する課題の解決と、次の世代に引き継げる社会環境を創造することを視野にとらえたいと思っています。/今年4月に新渡戸の著書(「世渡りの道」文春学藝ライブラリー)の解説文を書く際に「人生に一般解はない。時代と環境を背負い自分自身の解答を求めていくしかないのだ。」と末尾に記しました。/翻って4半世紀前の1991年、最初の著書「地球儀を手に考えるアメリカ」(東洋経済新報社)のエピローグでは、「体験を積み上げ、視座を拡大しながら時代にかかわることは容易ではないことを改めて痛感している。」と書いたものでした。/道は遠くとも志を同じくする友人とあるべき方向を見つめて活動していきたいものです。/まさに「新渡戸稲造記念 遠友みらい塾」を通じて、参加される方々が、この10年を実りある未来にするためのプラットホームになることを願っております。
2015年10月
(一財)日本総合研究所理事長 寺島 実郎

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