第17回 遠友みらい塾 記録

・2019年5月21日(火)「第17回 遠友みらい塾」が開催されました。当日の寺島塾長のお話を中心にして当日の様子を時系列でお伝え致します。
(2019年5月21日〈火〉・愛生舘サロン・南1西5「愛生舘ビル・6階」・会場・17:30~19:30)

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【Ⅰ】17:00~愛生舘サロン
(1)会場準備に「遠友みらい塾」の秋山代表が、机、椅子などを「ロの字」型に設営してくれていました。
間もなく、事務局業務の取りまとめ役をされているIさんが、当日使用の資料などを持参して会場に来られ、受付テーブルなどを用意。当日、初参加ながら受付業務の手伝いをしていただいたIさん、司会役のJさんがサロンへ。
正面の講師席を除く参加者席と受付け席に「資料集:寺島実郎の時代認識・2019年春号」
「新渡戸稲造と札幌遠友夜学校を考える会」からの活動紹介の公式文書類、「エゾリス写真」(Iさん撮影)、「最新介護機器」(Jさん説明)が置かれて、開始を待つことになりました。
間もなく、講師の寺島さんと寺島文庫の方2名も会場に来られて、参加者が揃うまでの数分間を待って、予定通りの時刻で塾が開始となりました。
寺島さんからの提案もあって、講演の始まる前に参加者の一人一人に自己紹介をしていただくことになり、それが終わって、講演が始まりました。

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【Ⅱ】寺島塾長の講演要旨は、以下の通り。
(2)「情報閉鎖空間」の恐ろしさ
高校卒業までの8年間、藻岩山を見て育った身としては、札幌は故郷の空気が伝わってくる地であります。ゴールデンウイーク中、タイのバンコクからイギリスのロンドンへと駆け抜けてきたのですが、世界がどうなってきているのか、それを皆さんにお伝えします。
高校時代に現代国語のT先生が、シベリア抑留を13年間も経験されてきた方で、随分と教えられました。「寺島、人間って非常に弱いものなんだ!」と抑留生活という“情報閉鎖空間”では、人間の猜疑心と嫉妬心が簡単に生まれるものであることを具体的に語ってくれました。
この“情報閉鎖空間”という限られた場にいる事と、今の日本人が置かれている時代状況は近いものがあります。

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(3)世界のGDPシェアの推移
それは今日の資料集の42頁にあります、「世界のGDPシェアの推移」という円グラフから海外の日本への蔑み、侮り……と言った空気が感じられます。
平成の始まりとも言える1988年、平成がほぼ終わる2018年の日本のGDPの落ち込みに着目したいと思います。1988年のアジアは6%(インド・2%、中国・2%)で日本は16%です。
2018年は、アジア23%(インド・3%、中国16%)、日本は6%です。
2000年には、日本は14%でした。なんとか持ちこたえていたのですが、21世紀に入って急速に埋没してきています。
コンピューターによるシミュレーションですが、1820年という江戸期の終盤で日本は、3%ほどのGDPです。第一次世界大戦(1914~1918)直前の1913年頃も日本は3%でした。第2次世界大戦で敗れた頃の1950年も3%。
このようにGDPという手法をとってみても、今の日本の成長率から予測されるのは、アジアが6%程度の成長率で進んでくる中での劣化です。
あらゆる意味から、日本は経済劣化だけではなく、国際政治の中で前に進めないという事から日本の指導者の見識の劣化が顕在化していると言えます。
北海道に関して言えば、「北方4島問題」についてもプーチンの手玉に取られているような状況も沖縄との関係からも洞察する必要があります。
何故、沖縄に米軍基地が集中しているのか、北海道には一カ所も無いのか!それを北海道の人たちはどのように考えているのか?
それらを考えると、率直に言って北海道は「ぬるま湯」の中に浸りながら衰亡して行っているのではないか?という印象をもってしまいます。

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(4)デジタル・エコノミーの社会構造
時間の制約もありますので、資料集の4頁の「株価時価総額上位10社の推移」という表を見て下さい。
大学では学生から質問されることの一つに「株価の総額って、そんなに大事なんですか?」というのがあります。最も大事などと言う気はありませんが、市場が示している企業評価という点で事実であり、壁でもあります。
企業にとっては、株価総額を超えた事業等、展開できないのです。そのようなリスクはとれないのです。表にある日本一のトヨタ自動車(株)で21.9兆円(2019年2月末時点)です。
米国IT5社(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト=GAFA+M)と中国2社(テンセント・アリババ)の「New 7 Sisters」と比較にもならないのです。
一方、そのグーグルは、東急電鉄の渋谷での再開発事業で積極的な展開をみせています。そして東京の西側寄りの発展に与していますが、これは資料集の40頁にある「中央リニアと圏央道」の図に見られる中央リニアの8年後開通を見越しているのです。
渋谷と相模原が10分で結ばれる時代が目前にやってきている訳です。
どうして日本は、デジタル・エコノミー時代に参画できずにきてしまったのか?
日本は、工業生産モデルでは優等生だったけれども、IT産業に関しては、そうはなれないで来ています。GAFAもテンセントもアリババも産むことが出来なかったのです。
回線料金やIT機器の部品製造など稼ぎの道を歩んできたとも言えます。IT革命の本質を見通せなかったとも言えます。時代はデータリズムに大きく進化していたのです。つまり、ビッグデータの時代にステージが変わってしまったことに気づけなかったのです。
アマゾンが登場した時に、ネットを使った本の販売会社と思ってしまって人は少なくないのでしょう。それでは、データリズムが支配する今の時代を理解するのは不可能です。
データリズムというのは、企業の業態、規模に関係なく、この時代への知見の持ち方として、これから先の展開を決めていくことになるでしょう。
既に企業経営者の中にも業態転換をして急成長している方々が私たちの身のまわりにいます。私の行っている「戦略経営塾」に参加されている方々にも、岐阜の小さな鉄工所を経営していた方が、データリズムに着目して現在、急成長しています。あるいは、伊勢でレストラン経営されていた方が、AIを駆使してレストラン需要予測をして日本のフロントラインに出てきています。
要するに、大きなリスクも取らずに、構想力も持たずにIT革命を見ているだけでは、衰亡するだけです。
日本の工業生産モデルの限界に気づく必要があります。どうしても成功体験というのは、必ずと言って良いほどに思考を金縛りにしますが、これが今の日本を制約しています。

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(5)日本の金融政策
今の日本の金融政策は、異次元緩和ということでマイナス金利を取り入れて、これは「ふくらし粉」を入れて経済を膨らませているようなものです。アベノミクスと称して、中央銀行である日本銀行が日本の株を買い込んでいるのですが、公的資金を株式市場に突っ込んでいる訳です。
我々の年金までも!です。これを止めたら日本の株価は3割は下がるとみられています。
金融政策ということで調整インフレと言っていますが、見せかけの経済と言えます。
経済政策というのは、技術、産業、人材育成などで基盤を固めつつ、もっと生真面目に取り組む必要があります。
どうしても我々は、1980年代からの高度成長期の主として工業生産部門でのトップリーダーたちを思い出して、それを引きずっているのではないかと思います。
しかし、世界の金融市場で日本の経営者を思い出すことがあるでしょうか?
日本のパラダイム転換をどのように果たしていくのか?
アジアのダイナミズムとどのように向き合うのか?

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(6)ジェロントロジー宣言
述べてきたような時代認識と、今日の異次元の高齢社会への向き合い方についても冷静に、賢明に捉えたいところです。高齢社会が、コスト負担の増大だけと捉えるのは間違いです。
80歳の高齢者が、社会に参画していける社会設計が出来るかどうかが問われています。それが日本の衰亡回避にも通じます。それを「ジェロントロジー協議会」で議論しているところです。
例えば、北海道が観光で産業起こしをするというならば、付加価値の高い観光をリードする基盤を作る必要があります。
資料集27頁にあります「1人当たりGDPで日本がもはやアジアの先頭ではない」という表があります。未だに日本がアジアでトップと思っている人がいるかも知れませんが、シンガポールや香港に追い抜かれています。
そして、我々は、豊かになると海外旅行に出かけたくなるものなのです。それも、豊かになればパック旅行ではなく、個人旅行になります。そうした観光客を受け入れるために語学力のある海外生活経験者などに活躍してもらう機会を用意すべきです。ここでアジアツーリズムとジェロントロジーの繋がる領域が生まれるのです。
今日お集まりの皆さんの活動とも繋がるような知性のある構想をこれからも一緒に構築して行こうではありませんか!

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【Ⅲ】 講演終了後
(7)塾代表の秋山さんはじめ、講演の感想も含めて、参加者全員が知見を語り合うひと時を得ることができました。
参加された皆さんの豊かな経験などが聞けたことも、今後の当塾の活動にも有益なものとして記憶に残ることでしょう。そして、その成果の報告会もいつか実現できたら何よりですね。

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